第40章 立夏の約束事
椛(流石にもうこの状況、子犬では無いか…
大型犬だよな、どう考えても…
ゴールデンレトリバー辺り?)
なんだかその夜と昼のギャップが可愛すぎて、我慢できずに声が漏れる。
椛「うふふふっ♪」
降谷「…笑うな…」
椛「ごめんごめん。
…ふふふふっ♪」
彼女の隠しきれない笑みに、今度は少し拗ねた様な表情を見せる。
本人も子供じみた事を言っている事は理解しているのだろう。
少し頬も赤みがかって見えた。
椛(血色も戻ってきて良かった。)
急に恥ずかしくなってきたのか、抱きしめる腕を緩めてきた彼の隙を狙って、両頬を両手のひらで挟む様に包み込むと、視線を合わせた。
大好きなライトブルーの瞳はそんな彼女の行動に、少し驚いた表情を見せる。
椛「貴方のそんな所も大好きよ。」
そのまま顔の距離を詰めて、チュッと口付けを落とした。
椛「わたしの『大切な』零…」
瞬きをして、驚いた表情を向ける彼と、柔らかく笑みを湛えている彼女。
彼女の表情に釣られる様に、降谷も困った様な笑みを浮かべた。
降谷(その言い回し、何だか懐かしいな…)
過去の…椛が思い出していた時と同じ出来事を、思い出しているのだろう。
些細なやり取りだったかもしれないが、あの時、車を降りようとした彼女を、咄嗟に引き留めて良かったと、今なら思える。