第40章 立夏の約束事
椛「目が覚めちゃったから、先に起きて朝の準備してただけだよ?」
降谷「…分かってる…」
椛(そう…だよね…)
目の前にいる彼は、賢いしもちろんそんな事実は分かって居るだろう。
そしてどうやら、寝起きで寝ぼけている様子も全くない。
普段、安室透としての姿は理性的で、落ち着いている姿がノーマルになっているが…
反して、心の内に隠している降谷零の喜怒哀楽の強さは人一倍だ。
もしかしたら、理性的なだけで、本来は感情のコントロールがあまり得意じゃ無い人なのかも知れない。
椛(いや、違うか…
大切な人を亡くしすぎてるから、もしかしたら本当は不安に駆られやすいのか…
からの、独占欲の強さですか?)
何でも器用にこなし、頭も人1番キレ、頼りになる大人の男の人…
顔は童顔だが…
それでも目の前にいるこの人は、多くの大切なものを既に失い過ぎている…
椛「零?
私ちゃんとここにいるよ。」
降谷「…分かってる…」
椛「大丈夫、零を置いて突然いなくなったりしないから。」
降谷「…」
空いているもう片方の手を、彼の頭に添えるとよしよしと撫ぜる。
昨晩は沸る男の欲を隠しきれない様な表情をしていたくせに、今朝は打って変わって子犬のような表情を見せて来る。