第40章 立夏の約束事
椛「零!
おはよう〜♪」
降谷「椛…おはよう。」
起きてリビングに入ってきた降谷に気付くと、朝の挨拶をして、パソコン作業の手を止める。
手に持っていた紅茶のカップをテーブルに置いたタイミングで、降谷が後ろから彼女を抱きしめた。
回された腕に椛は手を添える。
ギュッと抱きしめたまま立ち尽くしていて、いくら待ってもそれ以上何も言わない降谷。
少し違和感を感じて、腕を伸ばすと彼の頭に手を添えて優しく撫ぜる。
椛「零〜?
まだ眠いの?
どうかした?」
椛の首筋に顔を埋めて、未だ後ろから抱きしめている。
そんなわけで、椛は椅子から立ち上がる事も出来ない。
すると、スゥ〜っと息を大きく吸い込んで、静かにゆっくりと息を吐き出す気配がすぐ真横でした。
降谷「はぁ〜… 椛の匂いだ…」
椛「えっ?」
どうやら抱きついてからずっと、彼女の匂いを嗅いでいた様だった。
シャワーも浴びて、服も着替えて、化粧もし、髪も整えて今すぐにでも出掛けられる様な装いの椛。
寝汗の匂いは落とした筈なのに…
朝からそんな事を言われると、少し女心としては複雑だ。
けど、きっと悪い方の意味ではないと思い、そこはあえて突っ込まない事にする。