第39章 嘘つきと正義
いつもなら自宅の建屋に着くと、先に彼女を家の前で降ろすが、今日は『駐車場から一緒に歩く』と言うので、そのまま駐車場に向かい、車を停める。
先程同様、彼女のパソコンバックを持つと、空いた方の手を取り、指を絡ませた。
視線を上げて、嬉しそうに微笑みながら隣を歩く彼女と目が合う。
ふとした日常の一コマかもしれないが、自分の隣で微笑みながら歩く彼女の姿が、何よりも愛おしい。
まだここは外だが、どうしようもなく彼女にもっと触れたくなる。
せっかく繋いだ手だが、ゆっくり解くと彼女の腰に手を回してグッと抱き寄せて額にキスを落とす。
彼女も手を解かれて空いた右腕を、彼の腰に回して、身長差のある彼の肩に頭を寄せ、答える。
そのまま2人寄り添うように、家の中に入って行った。
玄関扉を開けて家の中に入ると、降谷は直ぐに後ろ手に扉をしめて鍵をかける。
降谷「椛…」
ヒールのストラップを外そうと、手をかけていたが、名前を呼ばれて、彼の方に視線を向けると返事をする間もなく、直ぐに上から彼の口付けが降ってきた。
椛「!?
んっ…」
唇が触れた瞬間は震えるほど優しくとも、次の瞬間には、気付くと全てを奪い去るような激しさに変わる。
今まで理性で隠していたが、感情をむき出しに解放してきた様な彼の口付けに、軽く息を呑む。
押し殺していた衝動が解き放たれたような、荒々しく深い口づけ。
彼の熱が容赦なく流れ込んでくる。