第38章 緋色の実情
椛「昴さんの車乗るの、久しぶりですね。」
沖矢「そう言われてみればそうですね。
前に夜…
家に送った以来でしょうか。」
明るく清々しい街並みを颯爽と走る赤いスバル。
まだ、時間が早いのか道路はそんなに混んでなく、その調子だといつもより時間がかからず、直ぐにでも彼女の自宅に着きそうだ。
車は毛利探偵事務所の通りを進む。
事務所の前を走り去る瞬間、彼女は1階のポアロに目を向ける。
まだ誰も出勤していないのか、店内に灯りが付いている様子は無かった。
沖矢「…気になりますか?」
そんな彼女の視線の先に気付いた沖矢は、運転をしながら声をかける。
椛「そうですね…
昨日から連絡を取っていないから…」
沖矢「それは懸命な判断だと思いますよ。
昨晩の様子だと…
彼は昨日からずっと忙しいでしょうしね。」
沖矢の言葉に、視線を進行方向に向けてスッと目を細めるといつもより気持ちワントーン低い声で話し始めた。
椛「ベットの下と、窓ぎわに一つづつ…」
変装してる時には細めている目が、薄らと開き本来のグリーンアイが一瞬キラリと光る。
椛「懸命な判断って、そう言う意味で言ってるの?」
沖矢「…」
椛「それとも…
レディの寝言でも聞きたかったのかしら?」
シンと静まり返った車内。
彼女の言葉に、言わんとしている事を理解して、沖矢は軽くため息を吐く。