第38章 緋色の実情
赤井はゲストルームから出ると、未だ灯りが付いているリビングへ向かう。
リビングには変装を解き、本来の姿でソファーでくつろぐ優作の姿。
優作「椛さんと、話は出来たかな?」
赤井「はい、お陰様で。」
優作「それで?
どんな話をしたか聞いても?」
赤井「…」
優作から、そんな質問が出てくると思ってもいなかったが…
赤井は今のその一言で、全てを察する。
赤井「…彼女の小言を聞いたぐらいで、大した話はしてませんよ。」
優作「そうか…」
赤井「優作さんは?
今後どう出るつもりなんですか?」
優作「うん~そうだね…
彼の正体は公安だとはっきりしたことだし、君の正体もうまくごまかせたが…」
それでも少し思う事があるのか、顎を手に乗せて少し考え込む。
赤井「降谷君側からしてみては、まだ半信半疑だと思いますけどね。
沖矢昴に関しては。」
優作「まぁ、そうだろうね。
潜入捜査官として長い間潜伏し、組織の探り屋まで上り詰めた彼の事だ。
向こうからしてみたら、今回、『証拠を押さえきれなかっただけ』だろうしな。
また、折を見て探りに来るだろう。
彼女には?
口止めはしたのかい?」
赤井「椛から何か、彼にこちら側の秘密を漏らすことはないと思いますよ。」
優作「…相変わらず…
…随分と信頼しているようだね、彼女の事。」
赤井「椛は優作さんが思っている以上に、腹が座っている女性ですよ。」
優作「まぁ、そうだな。
先日も…そして今日の様子を見て、私もそう思ったよ。
…君がそう言うなら、我々もそれを信じよう。」
長かったようで、短かったような…
そんな初夏の夜が、それぞれ更けていった。