第38章 緋色の実情
側頭部に乗せられていた手が一撫ですると、スッと引かれる。
赤井「起こして悪かったな、朝までゆっくり休んでくれ。」
そう言ってベットから立ち上がろうとしたところを、腕をつかんで引きとめる。
椛「待って。」
腕を引かれたことで立ち上がり切れずに、中途半端に中腰立ちになる。
赤井「?
なんだ、子守歌でも歌ってほしいのか?」
からかいめいた赤井の言葉を無視して、先を続ける。
椛「安室さん…
降谷君の事、私に探り入れたかったんじゃないの?」
赤井「いいや、彼の本当の立ち位置が分かれば十分さ。
組織にいる時から元々疑っていたしな。
それに、俺が1番確認したかった事は、もう確認出来た…」
椛「?」
つかまれた腕を解くように彼女の手をつかむと、特に逆らいもせずに彼女も手を彼の腕から離す。
赤井「朝またその時間に呼びに来る。
おやすみ。」
椛「…おやすみなさい。」
赤井はすっと立ち上がり、そのまま振り返らず真っすぐ扉に向かいサッと部屋を出て行った。
再び部屋に1人残された彼女は、そのままベットの中に潜り込んで、先ほどまでの会話を振り返る。
椛(結局、私が聞きたかったことは…
答えてくれなかったな…)
寝返りをうって、そのまま瞳を閉じる。
椛(近からず、遠からず…
って感じなのかしら…)
このまま考えても答えは出ないため、朝までの時間素直に寝る事にしたようだ。
暫くすると再び静かに寝息を立て始めた。