第38章 緋色の実情
薄暗い部屋の中で、空気がシンと静まり返る。
知り合ってからまだ一年も経っていないが、今の今まで出来事を脳内で振り返る。
コンスタントに顔を合わせ、そして友人が多いとは言えない赤井にとっては、数少ない信頼できる話相手の一人だ。
彼女にとっては、大勢いる生徒の一人かもしれないが。
目の前にはジッと、こちらに視線を向けている椛の姿。
間接照明の光に照らされる彼女の瞳は、いつもより黒く透き通って見える。
赤井「…もう十分、力になっているさ。」
椛「えっ?」
足に肘をついていた腕が解かれて、ベットに座る彼女に伸びる。
そっと彼女の側頭部に手を添えると、髪の毛越しに、赤井の掌の体温が伝わってきた。
赤井(避けないのか…)
彼独特のグリーンアイの瞳は、ジッと近くで見つめられると、なんでも見透かされそうな心地がする。
先ほどよりも近づいたその距離のせいだろうか…
フワッと、赤井からほのかに硝煙の香りがした。
赤井「明日は朝何時に出るんだ?」
椛「あぁ~…6時ぐらいにはここを、出発しようかと思ってるけど。」
赤井「わかった、送っていく。」
椛「えっ? いいの?
秀一、全然睡眠取れなくない?」
赤井「問題ない。
今日もこの後しばらく起きている。」
椛「そうなの?」
赤井「あぁ。」