第38章 緋色の実情
これから先もずっと、決して忘れる事は無いであろう…
景光の優しい笑顔が、椛の脳裏に蘇る。
酷く懐かしいと同時に、今の話を聞いて、赤井と降谷の2人の間に入って、仲を取り持っていた姿を想像してしまう。
実際に、3人が一緒に組織にいる姿なんて、椛は見た事はない筈なのに…
何故だかそう言われると、容易に想像出来てしまうから、何とも不思議だ…
そんな一瞬切なそうな表情を浮かべた彼女の事を、赤井が見逃すわけもなく…
赤井「あまりそういった表情を、男の前で見せるのはやめた方がいい。
特に安室君の前はな…」
椛「えっ?」
本人は思い当たる節が無いのか、首を傾げてその言葉の続きを問う。
赤井「いや、何でもない。
そうゆう所に、惹かれたのかもしれないしな…」
椛「??」
ますます謎が深まる様な物言いに、訝しげな表情を浮かべる。
赤井「庇護欲が駆り立てられる…」
椛「…私そんなに弱っちそうに見えるって事??」
赤井「強い弱いの問題じゃ無いさ。
大切に思う人は特に守りたいと思うのは、男のサガみたいなものだろ。」
その言葉に、数時間ほど前に耳にしたセリフが脳裏に蘇る。
椛「秀一は?」
赤井「?」
椛「誰かを守るために、今日ここに戻ってきたの?
その為にずっと…
外に自分で家を借りる事もなく…
アメリカに戻る事もなく…
この家に住んでるの?」
もうすっかり寝起きの声も抜けて、しっかりと言葉を放つ彼女の質問が胸に刺さる。
椛「前に…過去、恋人を亡くしていると言ってたことがあったけど…
それに関係あるの?」
赤井「…」