第1章 イライ・クラーク 〜催眠〜
《次の日の夜》
「イライ君、来たよ」
ノックも無しに当たり前のように部屋に入ってくる。
『はぁ…』
帰れと言うつもりが、何故かため息が最初にでてきた。
「なんだい、ため息とは失礼な。私が来たのがそんなに嫌かい?」
『嫌、では、ないよ』
そう言った直後、顔が熱くなっていくのを感じた。
「へぇ、嫌ではない…ふーん……?」
嬉しそうにニマニマするを見て、拒絶しなかった事を後悔した。
『何しにきたんだい?』
何も無かったかのように、依然とした態度で聞く。
「いやぁ、今日の君の試合を見させてもらってね。凄いじゃないか!アイヴィ相手に君が4台分だなんて、私驚いてしまったよ!」
目をキラキラさせながら純粋に褒めてくる。何か裏がある気がしてならない。
だが、暫く黙って彼女の話を聞いていても、ずっと試合への褒め言葉だけだ。
『ありがとう、さん。お褒めの言葉は嬉しいけれど、もう夜も遅いから自室に戻って寝た方がいいよ』
昨日の事は忘れたかのように、なるべく紳士的に振る舞う。
普段からおかしい事を言っている上に、あんな半分レイプみたいな事をした相手に当たり前の様に会いに来るは、普通では無いのだろう。
普通の対応をした所で無駄だとは分かっていた。
「そう言わないでくれよイライ。どうせ君も期待はしているんだろう?」
そう言い、布団に私を押し倒し口付けをしてくる。
私はそれに抗うことが出来なかった。