第5章 謝必安&范無咎
〜夜7時〜
「謝必安、来たよ」
ノックをせずそのまま開ける。
『おやさん、早いですね。そんなに楽しみだったのですか?』
足音で分かっていたのかは分からないが、ドアを開けてすぐそこの所で謝必安の姿が目に入った。
謝必安の後ろには、ベッドに座りくつろぐ范無咎が居た。
范無咎はこちらに気が付くと、飲み物を取ろうとしたその状態で硬直してしまった。
「やぁ、范無咎。今朝はすまなかったね」
挨拶と謝罪をすると、彼は目を泳がせて顔を背けてしまった。
『無咎はこう見えてもシャイなんだ。グイグイ行っちゃってもいいよ』
『おい、謝必安…っ…!』
范無咎が謝必安に向けて何かを言おうとしたが、言葉に詰まってしまったらしい。
「じゃあお言葉に甘えて」
范無咎の隣に座り、腕を組む。
「今日は謝必安と遊ぶ予定で来たんだが、君の合意は無かったようだね?」
『………今知った』
蚊の鳴くような声で答える范無咎。彼は普段から感情の起伏が少なく、何となく取っ付きにくいという印象を持っていたので、こんな反応をするのは意外だった。
「ん?」
范無咎が不自然に足を組んでいる。
「ははーん、まさか私との距離感に緊張して勃っちゃったのかな?」
『ばっ、やめろよ……!!』
范無咎を押し倒してみると、案の定股間が硬くなっていた。
「可愛いとこあるじゃーん」
『……さん、私も居るのをお忘れなく』
謝必安が嫉妬する様に私の頭を撫でてくる。
「忘れている訳が無いだろう」
『ならいいですが』
羞恥で顔を隠してしまった范無咎を置いて、謝必安が私を押し倒す。
私の首にキスをした後、恐る恐る聞いてくる。
『…これは合意でいいんですよね?』
「これが合意じゃなかったら何なんだい?」
謝必安が安心したように私の服のボタンを外し始める。
『ま、待て』
范無咎が止めに入る。
『何でこんなことになってるんだ?』
本気で困惑している范無咎を見て、何だか申し訳ない気持ちになった。
「范無咎は私が荘園に来た理由を知らないのか……」