第5章 謝必安&范無咎
前ジャックに襲われてハンターも良いもんだと気付いた私は、ハンター棟をうろついていた。
好き好んでハンター棟をうろつくサバイバーなど居ないので、すれ違うハンター達には物珍しそうに見られた。
『おや、さんじゃないですか』
丁度部屋から出てくるジャックに話しかけられる。
「おや、ジャック!試合も無いのに部屋から出るなんて、どうしたんだい?」
『……私は別にひきこもりではないので』
デリカシーが無さすぎる私に呆れるジャック。
『貴女はまた次のターゲットでも探しているんですか?』
「せーかい!よくわかったね」
『はぁ……まぁ…頑張ってくださいね?』
やれやれと言うように立ち去るジャックに手を振り、また散策をする。
庭園のドアを開けた瞬間、ゴンという鈍い音と共にドアが帰ってきた。
『…』
ドアの先には黒無常がいた。
「うわぁ、すまない范無咎君……怪我は?当たったのは足?顔?痛むだろう?本当にすまない」
色々喋りかけるが、だまりっぱなしの范無咎。顔を覗き込むと、フイと顔を背けてどこかへ行ってしまった。
大丈夫ならいいんだが。
「はぁ……」
再度ドアを開けて庭園に入る。広々としていて、空気も良い。
ベンチに謝必安が座っていたので、その隣に座った。
『ここにサバイバーが来るなんて珍しいですね。こんにちは、さん』
「やぁ、謝必安。ご機嫌いかが?」
彼はにこりと微笑み返事をした。
「すまないね、先程君の相棒にドアをぶつけてしまった。謝ったがそのまま行ってしまったから、後で謝罪を伝えておいてくれないか?」
『ええ、構いませんよ。さんは無咎のお気に入りですから、大丈夫だと思いますけどね』
お気に入り、とはどういう意味か。だいぶ気になる。
『さんはどうしてこちらに?』
「次の獲物を探して」
『おぉ……無咎が襲われないといいですねぇ』
クククと笑う謝必安。そんな彼の腕に触れてみる。
『ん〜?』
「君から襲ってしまっても良いんだよ?」
『ふふ。噂は本当でしたか』
「……私は一体どんな噂を流されているんだ」
謝必安が悩む素振りを見せながら言った。
『男狩りのヘドニスト』
「まんまだね」
あまりに的確な噂に肩を落とした。
しかし、それを知っているならば話は早いだろう。