第3章 ナワーブ・サベダー
「ふふ、ナワーブはいじめるよりいじめられる側かな……私は気持ち良ければなんでもいいからねぇ」
やりたいプレイを妄想し1人でニヤニヤしていると、ドアがノックされた。
「はい、どうぞ」
ドアが開いて、ナワーブが入ってくる。
今の時間は夜12時だ。彼がこんな時間まで起きているなんて珍しい。
「どうしたんだい、ナワーブ?怖い夢でも見たのかい?」
茶化すように言うが、返事が無い。
「ナワーブ?」
近付いて頬に触れてみる。その瞬間、ナワーブが倒れ込んだ。
「!?……大丈夫かい?」
手を握ると、物凄く冷たい。
『ごめん……こんな理由で会いに来れるの、お前しかいなくて…』
どうやら、茶化したつもりで言った悪夢は事実だったらしい。
「いや、良いんだよ。丁度今君のことを考えていてね」
君でいやらしい妄想をしていたとは死んでも言えない雰囲気だ。
しかし、ナワーブもこんなになるほどの悪夢を見ることがあるのか。少々驚いた。
布団に入り、毛布を持ち上げてナワーブに手招きをする。
「おいで、ナワーブ。今日は私が一緒に寝てあげよう」
そう言うとナワーブは安心したように布団に入り込んできた。
恋なんてものはしたことがないしこれからもする予定は無い。が、もし私が恋をするならナワーブの様な素直な男を選ぶ。
「ナワーブ、鼓動が早いね。怖かったね」
『………』
ナワーブがそう小さな声で呟き、強く抱き締めてくる。
「大丈夫、私はここに居るよ。君の悪夢なんて全て吹き飛ばしてしまおう」
『ありがと……』
そのまましばらく撫でていると、静かな寝息が聞こえてきた。
顔を覗き込んでみると、ナワーブの長いまつ毛が見えた。顔の造形が本当に良い。
どちらにせよ、こんな状態では何かするに出来ない。
「私も寝るか……」
ナワーブを抱きしめ直し、私は眠りについた。