第2章 イソップ・カール 〜監禁〜
部屋に急いで駆け込み、鍵を閉める。
激しく鼓動する胸を抑え一息つき、着替えの為クローゼットを開けた時。
「んばぁ〜」
中からが出てきた。
『ひぎゃぁぁぁぁ!!!』
10数年ぶり位に大声を出し、そのまま倒れてしまった。
「おや…?」
ーー視点ーー
イソップ君を数十日ぶりに見掛けた。
あの子はかなりの人見知りだったはずだ。
イライの様な普通の奴なら気軽に手を出せるが、彼の様なよく分からん奴に手を出すのは難しい。
ひとまず声だけかけるか。
「イソップ君じゃないか。こんな時間に外に出てくるなんて珍しいね?」
胡散臭いと言われる笑顔が出ないよう接したが、何かがダメだったようで驚かせてしまった。
驚いた拍子に座り込んでしまったイソップ君に手を出してみたが、その手を取らず彼は一目散に走り出して行った。
……面白くなりそうだ、部屋に先回りしてみよう♪
ーーーー
「……という経緯だ…。エミリー…あの、悪気は無くて…」
弁明の暇も無くゲンコツを食らった。
当然だ、この私がまたバカな事をしたせいでイソップが泡を吹いて倒れたのだから。
ただ、バカみたいにデカいイソップを医務室まで運んだのだから、これでもう良いだろう。そういうことにしておこう。
医『部屋に連れて戻って。貴女が変なことしたんだから、責任持って目が覚めるまで面倒見なさい』
「はーい……」
……本当に私に任せていいのか、エミリー?
ただ、これは絶好のチャンスだ。正当な理由を持ってイソップの部屋に長居出来る。
その為にはまたこの巨体を部屋まで連れていかなくてはならない。
医務室と同じ階なのが不幸中の幸いだ。
イソップを持ち上げようと力んだ瞬間に、指先がピクリと動いた。
今起きられても個人的にちょっと迷惑だけど、まぁ起きただけ良いか……。
「起きたかい、イソップ君。すまないね変な事をして」
目をぱちぱちさせ、私をひたすら見つめ続けるイソップ。
「な、なんだい?」
不可解すぎて顔が引きつった感じがした。
『…ひぇ……』
また倒れ込むイソップ。
起きた瞬間私に抱え込まれている状況に頭が追いつかなかったのだろう。
起きたり寝たり、忙しいヤツだな……。
多少の文句を胸にしまい、私はイソップを抱えたまま部屋まで戻った。