第7章 ガチャのお店
「わ〜、ここがガチャのお店……」
思っていたより可愛らしい飾りと音楽が流れているお店に私はついうっとりした。いつも画面上でしか見ていなかったゲーム世界にいるのも、悪くないかも、なんて思う。
「おお、ユメにカシタロー! お前たちもいたのか!」
そこに現れたのは鳥の被り物をしたNPC、コッコくん。追い出す理由もないから最初からこのハッピータウンに住んでいたNPCだ。
「こんにちは、コッコくん。君も買い物に来たのかい?」
カシタローさんはナチュラルにコッコくんに挨拶をする。私はよく知ったNPCに戸惑ってしまい、挨拶に出遅れてしまった。
「こんにちは! そうだぜ、買い物に来たんだ!」
元気で大きな声を返すコッコくん。画面上ではセリフすらなかったNPCだったから、そんな声していたのかと私は驚くばかりだ。
「ハハッ、今日も元気だね、コッコくん」
「まぁな!」笑うカシタローさんにコッコくんは得意気だった。「俺はな、明日お引っ越しイベントが来るってもんだから、新しい被り物を買いに来たところなんだ!」
それからスポッとニワトリの被り物を外したコッコくんの顔は、黒い髪に緑の混じった茶色い目をしたそこそこのイケメン青年だった。このNPC、こんなにイケメンだったのか。カシタローさんには敵わないけどね?
「新しい被り物、いいね。素敵なものが見つかることを祈ってるよ」
とカシタローさんが言うと、コッコくんはケラケラと笑った。
「おう、ありがとな! カシタローも新しい狐面でも探したらどうだ?」
とコッコくんは言って。
私はえっ、と言葉が詰まってカシタローさんを見やった。いつも優しいカシタローさんの笑顔が消えた。
「これは変えられないよ。ユメに選んだものだからね」
それからちらりとこちらを見て微笑むカシタローさんに私はドキリとした。アバター同士でプレゼントを交換するような仕様はないはず。ということは、画面上にいる私のこと……? 確かに私がアバターに狐面をつけさせたけど。アバターたちが、現実世界を認識しているとは思えなかった。