第6章 学校生活
「え」
思わず声を出してしまった私に、どうしたの? と顔を覗き込むカシタローさん。ああ、下から眺めるカシタローさんも絶景絶景……って感動している場合じゃなくて。
「お引っ越しイベントって、なんだっけ?」
私はカシタローさんに聞いてみる。オンラインですら友達のいない私は、この箱庭であるハッピータウンにフレンドと呼べる住民はいない。なので学校にいる学生も、町をウロついているのもNPCなのだが、時々公式が発信するイベントで、全く知らないオンラインプレイヤーがランダムで配置されることがあった。といっても、どこかのプレイヤーがデザインしたアバターが来るってだけで中身にプレイヤーはいないのがゲーム上の仕様だが……現実世界の私がゲーム内にいる今、そっくりそのままのイベントという気がしない。
「他の町から、住民さんが遊びに来るイベントだよ。気に入ったら、僕たちの町に住んでくれるかもね♪」
とカシタローさんは明るく言うが、正直推し以外興味ない私は、お引っ越しイベントが来ても全員断っていたのだ。だが今は……このゲームのプレイは誰がしているのか、または誰もしていないのか、そのイベントがどう私たちに作用するのか、全く予想がつかなかった。
「お、お引っ越しの人が来るなら、どこかでお着替えとかした方がいいかな〜」
私の焦りがバレないように訳の分からないことを言ってみせたが、カシタローさんは気にすることなくこう言った。
「だったら、ガチャのお店があるよ! ガチャ石は少しあるから、見に行こうよ!」
「う、うん……」
ガチャ石……それはどこから引き落とされたものかしら?
色々な不安がありながら、私はカシタローさんの後をついて行った。