第4章 異世界生活
「え、記憶喪失?」
とりあえずカシタローさんと私(という名前のアバター)の自宅に戻り、事情を説明することにした。まさかアバターカシタローさんに異世界から来たという話が言える訳もなく、私は記憶喪失になったみたいだ、ということにした。
「自分の名前と……僕のことは覚えているってこと?」
と確認にカシタローさんが聞いたから私は頷いた。推しを騙していることに少しの罪悪感がありながら、こんなイケメンを間近で見ることも早々ないと自分の欲望が優先してしまう私に心の中で懺悔。
「そっか……それは大変だ」
しかし、カシタローさんは私の嘘に気づく様子なくうーんと考え込む素振りを見せた。横顔もイケメンだ。カッコイイ。ここがゲーム中だというのに、クオリティがヤバ過ぎる。
「それで、私とカシタローさんはどうして町にいたの?」
私の話もこれくらいにして、なぜ外にいたかカシタローさんに聞いてみる。画面上では、私たちアバターは町の中をウロウロしていたり、時間になったら家に帰ったりしているが、その意図まではよく知らなかった。ただただ私は、カシタローさんのアバターを作ることだけにしか課金していなかったから。
「ユメと散歩していたんだよ、今日は学校が休みだからね」
「学校……」
そうだそうだ。この箱庭ゲームは、自分オリジナルの町が作れるもの。しかし私は、チュートリアルで最初に置けと言われている学校と公園以外、このハッピータウンには存在しないのだ。自宅は初期設定の時からあったから、学校と公園しかないとなると、そりゃあアバターたちだって暇する訳である。ハッピータウン……我ながらダサい名前なので今すぐ変えたいところだ。