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箱庭世界の推しと私[kstr]

第2章 きっかけは


 私は気分が上がってきて、自分が持つサブ端末で歌詞太郎さんの歌を流した。
 伊東歌詞太郎。私の最推し歌い手だ。
 出会いはあの日。私が学生だった時。
 友達に歌い手の存在を教えてもらってなんとなく歌い手巡りをしていたある日、パワフルで繊細な歌唱力に、私の心はグッと掴まれた。
 それから何度も聴いている内に、私の「最推し」になっていて。
 それとも彼の歌声を聴いたあの瞬間から、私の中では既に「最推し」だったのだろうか?
 ええい、この際どっちでもいい! 今このアプリゲーム内にカシタローさんがいる! この上ない幸せだ。
 あ、名前つけないと! 今日から貴方は「カシタロー」ね!
 アプリ内のアバターに名付けを終えると、手乗りサイズの人間みたいなカシタローが、ぴょんぴょんと跳ねた。
 うっ……実際カシタローさんがこんなふうに動いたらどうしよう。しぬかもしれない。
 でも1つだけ心残りがある。歌詞太郎さんの相棒ともいえるギターケースを持たせていないことだ。さすがにレートが高かった。誰も交換してくれない。もう少し探してみようかな……?
 そこまで考えが発展してきたところで、時計が夜中を指していることに気がついた。明日も仕事だ。そろそろ寝ないと。
 私はスマホを閉じて、布団に潜った……はずだった。
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