第13章 告白
「そんな気がしていました。ユメは、いつものユメじゃないのでは、と」
「え」
私はカシタローさんを見つめた。狐面の奥で目を伏せていること以外何も読み取れず、私はカシタローさんの次の言葉を待った。
「時々貴方が口ずさんでいる歌は、僕ではない僕が、作った歌なのではないですか?」カシタローさんは話し続ける。「推し真似シャレという言葉を聞いたことがあります。僕にはよく分かりませんが、誰かの好きな人の格好をさせるのが、この世界なのだと」
「知って……いたんですね……」
アバターたちは……ううん。カシタローさんは、思っていた以上に多くのことを考え、知っていたのだ。知っていて、いつも通りの「仕様」に従っていたのだと思うと、私は。
「ごめんなさい、黙っていて……」
「いえ、いいのですよ。ユメにはユメの考えがあって、僕には僕の考えがあった。だから言わなかったし、聞かなかった。お互い様ですよ」
俯く私に、目の前で必死に両手を振っているだろうカシタローさんの気配を感じる。画面越しでは見ることのなかった仕草だ。アバターたちにも、個性というものはあるのだろうか?
「ありがとう、カシタローさん……」
涙が出てきそうだった。ゲームだから、アバターだから、NPCだから。私はどこかでそう言い聞かせて、アバターのことを……いや、カシタローさんのことを騙していたのだと思うと、余計悲しくなった。私は悪いことをしたのだ。
「それで、ユメさんはこれからどうするんですか?」
それでも笑顔を見せてそう聞いてきたカシタローさんに、私はちゃんと答えようと思った。それが仕様でも、カシタローさんの本当の意思だとしても。
「……帰ろうと、思ってます」
私は、はっきりと答えた。