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箱庭世界の推しと私[kstr]

第9章 葛藤


 翌朝。どうも外が騒がしいなと目を開けると、隣にカシタローさんが寝ていてぎょっとする。
 私、あのあとどうやってベットに来たんだっけ、と思い出せないまま急いでベットから下りようとしたが、まだぐっすり眠っているカシタローさんを眺めていると……ちょっとだけ、本当にちょっとだけ欲が湧いて出てきたのである。
 狐面の下の顔はどうなっているのか。
 実際ですら触れてはいけない禁忌の地。ゲーム上ではいいのではないかという欲と、いやいやそれでもカシタローさんなのだからそんなことはしてはいけないと理性が私の中でせめぎ合う。
「……っ」
 息を飲む。手を伸ばそうとしてしまうが、寸でのところで私は思いとどまった。
 例え彼が歌詞太郎さんじゃなくても、お面の下は絶対領域なのだ。覗いてはいけないのだ。ファン如きの私なんかが。
「カシタローさん、朝ですよ」
 私は思いとどまった手をカシタローさんの肩を揺らす方に向けて声を掛けた。カシタローさんは、ゆっくりと寝返りを打ってこちらに微笑んだ。
「おはよう、ユメ。今日も素敵だね」
 朝からその発言はズル過ぎる。素敵って何に対して言ったの? 私はそう聞くのを躊躇った。
「素敵なのはカシタローさんの方だよ」
 私も同じく微笑んでみせた。カシタローさんが幸せなら、なんでもいいと思った。
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