第1章 異世界どころのさわぎじゃない
「……魔王を倒すまで帰れないってこと、ですか?」
「元の世界に帰すのには召喚よりもさらに膨大な魔力が必要となるのだ」
「別に俺ら、強いわけでもないですよ」
「貴方がたが召喚されたのには理由があるのだ。異世界へ召喚された時点でもっとも我々の世界で必要とされている力、秘めたる力を持っている。それは今後わかってくるであろう」
「…………」
え、それって私も含まれてる?
この中で???
「わからないことは聞いてくれ。出来うる限り説明しよう。
まずは、それぞれ名前を聞かせていただけるかな?
名前だけで構わない…………すべての名前を」
ん?
すべての名前?
「あ、えっと俺は……」
「「あーーーーっ!!!」」
ふっかさんが答えようとして私はガバッと顔を上げて叫んだ。
同時に叫んだのは佐久間くんだ。
私が声を同時に上げたことに驚いたのか、目を丸くしてこちらを見た。
私と目が合うとニッと少しだけ笑みを見せ、ムキムキおジイさんへ視線を戻した。
「なぁ~んで、フルネーム???
なんか契約でもさせようとしてる?」
「……」
「出来うる限り説明するってことは都合の悪いことは説明する気ないんだよね~?あるよね~あるある。異世界召喚されて、右も左もわからねぇ人間に対してそーゆうことしちゃうやつ」
「…………」
ムキムキおジイさんは無言だ。
それは言い当てられたと認めているのだろうか。
勝手に契約して、彼らの自由を奪おうとしたのだろうか。
気まずい沈黙の中。
私はふるりと身を震わせた。
そもそも召喚されたとされるこの場所が、その場にいる人の数が数えられないほど暗く陰気で、寒々しい。
Snow Man効果であまり感じてなかったけどね。
「とりあえず……
一旦、明るい場所に移動させてもらえませんか」
隣のめめが言った。
察する能力強すぎんか?これぞ勇者か?
めめはやっぱり最高である。