第5章 好感度の距離
「ええと……」
目を合わせづらくて、思わず下を向いた。
私、変な顔になってるかも。
「うーん。部屋の件はオッケー?」
「あ、はい!」
なんだか断れない雰囲気だ。断る理由もないけどさ。
「じゃあ、食事行こうか?
葵ちゃん。携帯は部屋にある?」
「はい」
「俺がしばらく預かっててもいい?中見たりしないから」
ニコリとふっかさんが笑みを見せる。
また断れない雰囲気。有無を言わさない感じだ。
「ふっか。葵ちゃんが困ってる」
「っ照!お前があんな風になんなきゃ俺もこんなことしなかったのっ!しょうがないだろっ」
ふっかさんは少し怒ったように照くんの胸を叩く。
「あああのっ携帯預けますっ!全然使ってなくて、電源つかないかもしれないですけど!だから喧嘩しないでください」
私は鍵のついた引き出しから携帯を取り出してすぐにふっかさんへ渡した。
「……ごめんね?喧嘩じゃないから大丈夫。
携帯はその、やっぱカメラとか使われちゃうと俺達も困るからさ…」
「そうですよね!わかります!!」
正直。何度かカメラくらい使ってもいいんじゃないかとか頭に過ったのは事実だ。でも皆が嫌がることは絶対にしたくない。中も見られて私は平気だけど、元の世界で購入したSnow Manの画像だらけで少し恥ずかしいかもしれない。
みんなに信用してもらえるなら預けるぐらい全然オーケーだ。
「あの……なんか近くないですか?」
歩き始めると右にいるふっかさんも左にいる照くんも、腕がちょこちょこ当たる距離だ。
今までこんな距離感で歩いたことはない。
「え?そう?これくらい普通じゃない?」
ふっかさんは少し声を上ずった感じで答えると、照くんは頷いてる。
二人とも変だ。ぎこちないし、これくらいって全然普通じゃない。
「ん-やっぱ手くらい繋がない?歩きにくいし。こうゆうのって大事だと思うんだよね」
「そうだねーいいかな?」
「はっ!?えっ!!??」
「葵ちゃん、もっと俺らに慣れたほうがいいよー。うんうん」
と言って両側から手を握られる。意味わからないし、急に死ぬほど恥ずかしい。
親に挟まれて捕まった子供のようだし、顔を右も左も向けられなくなってしまった。