第5章 好感度の距離
私は自分の部屋のベッドで頭を抱えていた。
意識がぶっ飛んだのは何となく覚えている。
目が覚めたら、横に安堵の笑み(極上)の二人がいたのだ。そこから一気に血の気が引く。
私、岩本照くんとキスした?いや、人工呼吸?マウストゥーマウス?いや、それより舌……アアアアアアアアアアアアッッッ!思い出して自分の枕に向かって叫び、その場で転がりまくる。
照くんだよ?照様。ひーくん。照くんが寝ていたベッドに横になってたこともビックリだよ!何してんだっ私!!!
そこから照くんが私に突然キスをしたことを謝ってきたけど、どうにもいたたまれなくて「気にしないでください。こちらこそ本当にすみませんでしたっ!」と早口で唱え、身体を起こし、ベッドから降りた。
阿部ちゃんが大丈夫?送ろうか?と、声かけてくれたけれど、ブンブンと頭を横に振り振り、そのまま逃げるように自室まで駆け込んできた。
そして、今に至る。
何がどうなればあんなことになるんだ?
照くんは実際体調はどうなったの?
ナニガドウシテ……何度もリピートするが頭はずっと混乱状態だ。
だけど、照くんにどうしてしたんですか?なんて聞けるわけがないしっ!!!
ベッドで一人格闘技を続けて数時間後、部屋にノックが鳴った。
「あーごめん。深澤です。あとリーダーもいます。入っていいかな?」
「へっ、ぁ…ちょ、ちょっと待っててください!」
慌てて部屋に洗面まで走り顔のチェック。ボサボサの髪を直し、服のシワを直してから扉を開けた。
「葵ちゃんが来づらいかなと思ったんで迎えに来ました。俺達一人ずつにも慣れて欲しいし?ね」
「えっと……」
「部屋、あんまりイジったりしてない?てか、私物もそんなないもんなぁ…俺らが外出るのも禁止しちゃったし」
慣れる?無茶なっ!!!
心でツッコミを入れているとふっかさんは話を続けた。話の流れが読めない。
「あーて言うのもさ……葵ちゃん、俺らの部屋の近くに移動しよう」
「えっ!?」
「ほら、ここだと距離あるし、近い方が安心するからね」
「何かあったときに守れる距離にいて欲しい」
ふっかさんの言葉に照くんが言葉を加えた。
守るなんて言ってくれるのは、すごく嬉しい。
照くんの顔は至って真面目だ。さっきのキスに動揺しているのは私だけのように感じた。