第4章 Snow F
それから1時間ほど経った頃だろうか。
照と阿部が戻ってくる。葵ちゃんは自室へ戻ったそうだ。
「まず俺から今までの調べたことと今回の件を一旦まとめるね。
勇者は『世界を平和へと導く者。悪を封じる』。自分の能力がわかった面子から言わせれば理解しがたくとも力と共に自覚が現れる。ってことで認識してる。まぁ俺はまだ自分の能力わかってないんだけどさ。
それと聖女は『世界に危機が訪れると勇者とともに現れ、共に生き、癒し慈しむ存在である』なんだけど…
この世界にとって聖女は欠かせないものという話が出てこない。救世主としての伝記も見つかってない。けど、勇者と共に現れて、その存在を隠されている。
そこから俺は思ったの。
癒し慈しむ存在ってさ。
ここの世界全体の話ではなく勇者の『俺達』にとって、なんじゃないかって。
だから、特に目覚めたメンバーには葵ちゃんに対して何かしら感じるものがあるんじゃないかな?どう?」
俺達は異世界転移してから毎日何度も集まり話し合った。今後の話、現状、その他もろもろ。なんせ何もわからない世界だ。
阿部ちゃんには今まで調べた内容は毎日報告としてあがってはいたが、今回の件は初めて聞く。
聖女の存在についての考えを聞き、俺を含め、まだ能力が目覚めてない面子はメンバーを見回した。
「なんかさー、俺モヤっとしてたの。岩本く…あ、照くんの手握ってた時。え?ナニコレ?ってなって」
「……確かに。オレ、コージが葵ちゃんと手繋いでて、イラっとしたけど。いや、え?うーん。おかしくね?オレら異世界に精神操作されてんの?」
「え、康二くん?ここ来る前?手出すの早くない???」
「なんで急にオレの話っ!?
そんなん…いや、たまたまやっ!たまたまやって!!」
「ナンだよ、たまたまって。いやらしいな!」
「いっいやらしくなんかないわ!阿部ちゃんが調べるゆうて葵ちゃんと手握ったって聞いたから真似しただけやし!!」
少し沈黙の後、ラウールが自身の胸あたり撫でながら答えると、佐久間がそれに続いた。康二のたまたまは意味がわからないが、耳が真っ赤だ。目黒は肘をつき、眉間に皺を寄せ、舘は俺の向けた視線から目を反らした。
自覚があるってことか?よくわからん。