第3章 聖女の力
中庭はお城の東側。中といってもお城の塀で囲まれているだけで一体誰のためにあるのかと思ってしまうほど、とてつもなく広大だ。中央に池があり、そこから小川が流れ、その周りを囲むようにたくさんの花々が咲いている生垣があり、まるで迷路だ。一日中、庭園の草花を手入れしている人が数名いるが、散歩していたり庭園を楽しむ人はほぼいないので、図書室と同じで過ごしやすい場所ではある。
区画がわかれていて、兵士の訓練場や移動用の馬車や厩舎もあるみたい。
「ここ、ほんまに広いよな~…
向こうまで行ってみよか?」
「特別、中庭に用事ってわけじゃないんです。
ただじっと出来なくて。一緒に来てくれてありがとうございました」
「そうなんや?まぁ、じっと出来んのは俺もそう。
あっ!一人になりたかったん?」
「そうじゃなくて…通りがかりだったし、康二くんが用事があったのかなと思って…」
「んーいや、ちゃうから。葵ちゃんがええならもうちょい歩こか。1人になりたかったら言うてな?
なーんかなぁ…決まった時間があるわけちゃうし、勇者の力?ってのがまだようわからんもん」
康二くんは池の中心に建てられた真っ白なガゼボへ着くと手すりを手をかけ、下を覗き込んでいる。
この一週間。
毎日会える9人。
一緒に異世界に落とされた私を、Snow Manの皆さんは声をかけてくれる。
起きると周りは見たことない景色で、知らない世界。自分たちの仕事にも帰れなくて、きっと人に気を遣う余裕などないはずなのに……。
そもそも康二くんと二人きりとか、二人きりとか、二人きりとか……。
「葵ちゃん?」
「あ、はい!き、聞いてます!!」
無言になった私に不思議そうな顔で声をかけられ、慌てて返事をした。
ちょこちょこ現実逃避してしまう。
いや!何しても尊い康二くんが問題!
Snow Manが問題!
「え、ええと、ですね……。
私も正直に自分の力?ってのはよくわからないんです。これだ!って感じたこともないし。
でも、帰るためには必要な力なのかもしれないけど、焦ることはないと思います!」
「ははっ
せやんな~。焦らんでもええよな」
私の言葉に笑ってくれた。
康二くんはやっぱ、笑顔がいいな~