第1章 異世界どころのさわぎじゃない
「……」
耳にはまだSnow Manの歌声が流れている。
目の前には私が押し倒した康二くんが自身の頭を摩りながらこちらを見ている。え、かっこよ……
いつも画面越しに私は彼の顔をじっと見つめてしまう。鼻がチャームポイントなのよね。うんうん。え?
触れあっている上半身は男らしく、骨ばった感触と人肌の温かさにじわじわとリアルが押し寄せた。
「っっっごめんなさ……っ!!!」
「っと!危ないよ」
「!!!!????…ん、ぎゃっ」
康二くんから身体を離そうとガバっと勢いよく起き上がると、今度は背中を誰かに支えられた。
変な声が出たのは仕方がないと思う。
振り向いたら、めめがいたのだ。目黒蓮だ。目黒蓮ぞ???
私を支えたことで、めめのサラサラの黒髪が揺れ、澄んだ黒い瞳が私に向けられている。
私は今ここで心臓止めたほうがいいんじゃないだろうか???
「……」
人間、現実とかけ離れたことが起こると思考は停止するという。
前に向井康二。後ろに目黒蓮。
これ以上、現実離れをした状況がある???
テレビでよくある一般人の前にいきなり推しが現れるバラエティ。一般人の人はびっくりしすぎて逃げるよね?
うん。逃げたい。
今、私の前後はダブルSnow Manだ。
おかげさまで腰に力が入らないし、逃げられる状況じゃないし、心臓がぶっ飛びそうになった私は、その場で体育座りをして床を見つめることにした。
これぞ、現実逃避だ。
もちろんSnow Manの曲は流れたままだ。
あー床が黒いなぁ~……
家の床じゃないなぁ~……
家にいたはずなんだけどなぁ~……
そんな私の心情など誰もくみ取ることもなく、ざわざわと周辺は騒いでいる。
「あの…
ここは、どこですか?」