第1章 異世界どころのさわぎじゃない
突然だ。
私はベランダで洗濯物を干していた。
いつもの如く朝から追われる家事に、気分を乗せるためにSnow Manの曲を聞いていた。
近所迷惑なんて考えずノリノリで鼻歌を垂れ流してたし。近所よりも自分のモチベが大事。
「わっ!」
洗濯物を干し終わり、ベランダから戻る。サンダルを脱いだ足が思ったりよりも上がらず縁に引っかけた。
膝がゴッと鈍い音を立てる。咄嗟に上半身だけは守ろうと私は床に手を伸ばした。
「いてっ!!」
…………え???痛がる自分じゃない声に驚く。
私は床に手がつくはずだった。なのに、何故か目の前に人がいて、声はイヤホン越しに聞こえた。
倒れた私の声じゃない。
私が倒れたせいで、その人も一緒に床に倒れたのだ。
「おおおっ!成功したぞっ!!!」
「は?」
「えっ?」
顔を上げるより先に、周辺からワッとした歓声と、焦る声達が聞こえる。
は???
ここ、私の家だよね???
顔を上げ、私は一緒に倒れてしまった人物の顔を見た。
「……」
推しの向井康二くんが目の前にいた。