第3章 聖女の力
「その顔でからかうのは駄目です!
……歴史知らずのお馬鹿ですみません……」
「お馬鹿なんて思わないし、からかってはいないんだけど…
その顔って、アイドル顔?」
「そうです!皆さん全員尊いんですよ!!」
「はは…。
もう、そうやって喜んでくれるの葵ちゃんだけだしな〜」
いやいや、まだ7日ですよ。
慣れるなんて無理な話なんだからね!!!
「そんなことないですよ。
昨日私、外の訓練場で「勇者様ー!キャーッ!」って声聞きましたから!!」
くっ、私も勇者様ー!って叫びたい。
どこの世界に来たってSnow Manはかっこいいんだよ!!
「あははっ。
お城の人はね。この世界を救う勇者ってだけで喜んでるだけだと思うよ。まだ俺達、何もしてないんだけどね。
前の勇者召喚の人数は5人だったって記録は見つけたよ。ただ、聖女もいたみたいなんだけど、勇者が5人だったってことは聖女を加えて6人でしょ?なのに、6人ってことがはっきりと書かれた記述がないんだ。
もしかしたら、隠されてたのかもしれないね」
「聖女を隠してたってことですか?」
「うん。聖女の力は貴重過ぎて争いが起きないように記録に残さなかったんんじゃないかな」
「貴重な力ってなんでしょうね…」
「うーん……。
まだ葵ちゃんの力がわからないからなぁ。
でも実は、この数日でわかったことはある」
「え…」
阿部ちゃんはソファに持たれて腕を組んだまま、こちらを見ている。見られているこちらは緊張で姿勢は崩せない。
「俺ら、葵ちゃんと一緒にいるだけでめっちゃ楽なんだよ」
「楽、ですか?」
「葵ちゃん。ここんところ午前中はこの部屋にいるでしょ?」
「はい」
「俺は午後もわりといるんだけど。あ、運動もちゃんとしてるよ。勇者だしね。
ただ、午後と午前じゃ疲労度が違うんだよね~」
「ええ?……本当ですか?」
「いや、本当だって!
感覚だから教えられないのが残念。葵ちゃんがいるだけで寝ないでもずっと勉強できそう」
ニコリと再び笑顔。
くっ、はにかむ阿部ちゃんが私には眩しすぎる。
むしろこちらのほうが癒されています。