第3章 聖女の力
聖女とは。
神聖な女性であり、平和をもたらす。
世界に危機が訪れると勇者とともに現れ、共に生き、癒し慈しむ存在である。
異世界モノの小説や漫画やアニメを網羅していた私でも聖女が大体そうゆう存在なのはわかっている。ただ、具体的には何する人?って聞かれるとパターンは場合によりけりだし、共に生きるって一体なんだろう?
確かにSnow Manと添い遂げられるなら本望かもしれないけどさ。
ほとんどの本は具体的に書かれていない。勇者も聖女もこの世界で伝説の存在のようで、実際に聖女を見た人物が書いた本と言うものは今のところ見つかっていない。
お城の図書室は使う人もほぼいないし、ゆったり本を読む場所もあるので、とても過ごしやすい。沢山の本棚に囲まれた中央には様々な椅子やテーブル、ソファが並んでいるが天井も高く広々としているので圧迫感はない。
私は固い長机からふかふかのソファへ移動し、深くため息をついた。
「疲れた?ここ、座っていい?」
ソファで休んでいると顔を覗き込むように後ろから現れた阿部ちゃん。
もちろんどうぞ!と言うとニコリと笑みを見せた。阿部ちゃんは図書室で会うといつも声をかけてくれる。
あぁ…癒されるぅ~!
「まだまだ本は沢山あるけど、聖女の記録も勇者の記録も実録は見当たらないね。調べてわかったんだけど召喚の儀式を行ったのが前回が千年以上前みたい。日本で言うと平安時代になるってことだからね」
「確かに具体的なことはほとんど載ってないですよね。
平安時代。昔すぎ!ってことですか?
……実は本を読むのは好きなんですが、日本の歴史は得意じゃないので、平安時代のことはあまりよくわかってないです」
「枕草子とか、源氏物語とかを読んで理解しろってこと」
「ええと……な、なるほど~」
「ふはっ」
なんとか会話を続けようと返事をすると阿部ちゃんが笑う。
「…葵ちゃん、可愛いなぁ」
「ッ!!!」
唐突に褒められる。
歴史が答えられない申し訳なさでいっぱいいなのに、まさかの近距離で謎に褒められ、ヒュッと息が詰まった。
息をしろ!私っ!!