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異世界とアイドル【sn】

第2章 隠された力



4つ目の部屋の前、

「…………誰?」

ノックをすると消え入りそうな声が扉の向こうから聞こえた。

「葵です。
あの、しょっぴーに渡したいものがあってきました」

なんとか言葉をつかえないように伝える。何度も何度も慌てたり、会話するたびにビクビクするのは失礼だ……とは、思ってる。でも心臓はバクバクだし、推したちに慣れろなんて無茶言うなとも、思ってる。
そもそもしょっぴーはしょっぴーだけど、直にしょっぴーって呼ぶのはどうなのよ……はぁ、混乱してきた。

「こんな時間に女の子が一人で出歩いちゃ駄目だよ」

扉が少し開き、しょっぴーは顔を出すと営業っぽい笑顔で言った。ただ、顔色はあんまりよくない。

「ごめんなさい。あの、これ。化粧品、貰ってきたので、しょっぴーもいると思って。
どれが何かわかってからの方がいいと思って、色々試してたら遅くなってしまって……ごめ…っぎゃ!」

中途半端に開けられていた扉が大きく開き、しょっぴーに腕を引かれ、いきなり持っているカゴごと抱きしめられた。
変な声が出たのは仕方がない。
こればっかりは無理ぃっ!

「マジでっ!ありがとうっ!!
本当にもう見たことない格好のヤツらばっかだし、怖いし、もうわけわかんなくてさ!夜になってメイク落としたくても何もねーし!」
「は…はい。しょ、しょっぴー。あの、キャ、キャパオーバーするんでっ、ファンサがっすぎる!」
「あっ、ごめん…嬉しすぎて興奮した。
カゴ持つね。中へどうぞどうぞ」

しょっぴーはもうニコニコ満面の笑みだ。さっきまでの顔色の悪さはどこいった?
驚きすぎて自分の息が絶えるかと思った。散々考えた会話の文章がどこかへ飛んでいってしまったし。
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