第1章 青い監獄
怖い、この子ほんとに怖い。
関わりたくないと思いながらも隣にいる絵心さんを見れば何も動じてない顔をしていた。
「…いやお前には無理だ」
「…は?」
「お前はまだ自分の“エゴ”を理解していない。…お前みたいな自称・天才くんは世界にいくらでもいる。そうやって無駄な自信を飼い慣らして、戦いもせずに大人になっていく」
絵心さんは心底つまらなさそうに言いながら彼らに背を向けて、私はその背中を見ながら未だに扉の前に立っている子達へと視線を向けた。
確かあの子達、アンリさんが言ってた『天才達』だった気がする。
サッカー歴が浅いのに天才なプレーをする子達。
「傷つかずに生きていたいだけの自意識肥大野郎に興味はねぇ。ぬくぬく腐っていけ。帰れ(ファック・オフ)」
「はーい」
『え、帰るんだ……』
煽られた感じがあるのにそれにさえ興味無さげな銀髪の子はスマホ片手に帰ろうとした。
本当にこの子なに関しても面倒臭いというか興味無いんだろう。
でも隣の子は違ったようだ。
「フザけんな!!凪はそんな…そこら辺にいる天才もどきじゃない…!!」
「レオ?」
「2人なら…俺たちならできる!!」
「…2人?なんだそりゃ、世界一は2人も存在しないぞ?」
「じゃあ凪を世界一のストライカーにする!それが俺の“エゴ”だ!!」
「…待ってレオ。俺やりたくないって…」
「うるせぇ黙れ…。信じろ凪…。昼寝よりゲームより面白い人生に連れてってやる!!」
こっちの子も怖い。
いや2人ともかなりの恐怖を感じた。
おかしいでしょ、普通ならば自分が世界一になりたいと思わないのだろうか。
なんて思いながら銀髪の子の胸ぐらを掴んでいる紫髪の子へと視線を向けた。
狂気的な笑みを浮かべているのが本当に怖い。
「俺がお前を退屈にさせない!」
「……うぇー。分かったよ…じゃあ信じるけど1個だけ約束ね…。最後まで一緒にいてよ」
「ハッ!なんだそれ、お前のエゴ?」
なんて話しながら横を通っていた子達は扉の向こうへと歩いていった。
会場にいた300名全員が参加となり、会場はガラリと静かになってしまっている。
「…300名全員参加っと…」
『全員イカれてますよ、怖い怖い。帰りたいです…!!退職させてください!!退職させてくださいよ!!』