第1章 青い監獄
「己のゴールを何よりの喜びとし、その瞬間のためだけに生きろ。それが“ストライカー”だろ?」
その時だった。
1人だけの高校生が走り出し、思わずその子を見た瞬間目を見開いた。
誰よりも早くに動き、そして迷わずに走り出すその目は正直に言うと怖かった。
「潔くん…!?」
「クソ…!!行ってやるよクソがぁ!」
「俺も行く!」
「俺もだ!俺も!!」
最初に動いた子に釣られるかのようにその場に居た他の子達まで走り出したが、そんなに世界一になりたいのだろうか。
『そんなに世界一になりたいんですかね……。私にはよく分かりませんけど』
「今から分かっていくんじゃない?サッカー嫌いな君にも」
『…正直言うと分かりたくないです。退職させてください』
「却下」
『辞めたいッッ!!』
「ほんと君、すぐ泣くね」
走り出し扉の向こうへと行った『ある2名』を除く高校生達を見送りながらも、私はもう1回退職させてほしいと願ったが意図も簡単に却下された。
訴えていいだろうか。
なんて思いながら、私と絵心さんはある2人へと視線を向けた。
その2名除く他の子達全員は走り出し行ったのに、その子達だけが動かない。
「どーした?来ないのか?あとはお前ら2人だけだぞ?」
紫の髪の毛の子と銀髪の子2人。
他の全員は走り出したのに何故かこの子達だけは動かずにその場に留まっていた。
だが紫の髪の毛の子は直ぐに言葉を発する。
「……いきます!いくぞ凪…俺たちも“青い監獄(ブルーロック)”へ…!」
「いや行かないよ。めんどくさそうだし」
「おい凪……せっかくここまで来て……」
「多分、俺には“青い監獄(ブルーロック)”は向いてないし…。きっと退屈ですぐ帰りたくなる」
「…は?」
『と、とんでもない子だ……。怖っ』
何もかも面倒臭い。
そう言わんばかりの退屈そうな顔をした子に思わず言葉が零れてしまう。
「……ほう。俺の話は退屈だったか?」
「うん…。だって、W杯の決勝ゴールなんて俺には簡単に思い描けたし」
『……こわい』
怖いという言葉しか出ない。
まるでその子の背後からは髑髏が出てきているようなそんな圧迫感の背筋が凍るような空気が出ているような気がした。