第2章 第一選考
中に入れば上半身裸のメンバーが多くて、正直目のやり場に困りながらも水筒を渡して行く。
「話逸れちまったけどさ。別に…絵心の言ってることが全部正しいとは俺は思ってないよ」
「千切…」
「だって絵心はW杯優勝するためにとか言って、世界的ストライカーときてC・ロナウドとかメッシとかカントナとか言ってたけど。そいつら、みんなW杯優勝してないし。ただまぁ『これはサッカーを0から創るための戦いだ』って言ったのは、何かのヒントなのかなとは思うけど」
何言ってるか全然分からない。
サッカーの知識もない人間からしては、この子達が何を悩んでいるのかも分からない。
やっぱりマネージャーするなら知識もいるのかな…と思いながらもまだ水筒の中身がある子の分は冷蔵庫に入れておいた。
『じゃあ私は行くね』
「あ、 真琴。ありがとうな」
『どういたしまして…ひっ!?』
「え、なんで今俺悲鳴あげられた…?」
潔にもスポーツドリンクを渡して視線を上に上げれば目の前に彼の裸体が広がっていて、驚いてしまい思わず悲鳴をあげてしまった。
男の人の裸体なんて見慣れてないのだから、驚いて悲鳴をあげてしまったのは許してほしい。
『ご、ごめん…。あの風邪ひくから早く上を着て、ね…』
「あ…あ、ごめん!」
『いや…良いよ。あとタオルどうぞ』
「あ〜!真琴ちゃん顔真っ赤!」
『言わなくていいから!!』
蜂楽が揶揄うように指摘してきて思わず声を荒らげてしまいながらも、回収したタオルをカゴに入れていく。
そして私は一仕事を終えたのでロッカールームを出ながら次の仕事の準備を始める。
マネージャーの仕事はただ、スポーツドリンクを運んだりタオルを回収するだけじゃない。
メンタルケアというのもあり、明日はメンタルケアという個人面談をする。
『嫌だなぁ…。ここの子達大体怖いから個人面談とかしたくないんだよなぁ』
成る可く怒られることなく穏便に終わりますように。
そう祈りながら、回収したタオルを持ってランドリールームへと向かう。
夜過ぎ、静かになった青い監獄内。
私はノートと筆記用具片手にウロウロと建物内を彷徨いながらある人物を探していた。
『いない!!どこにいるの!?』