第2章 第一選考
サボり常習犯はきちんとトレーニングしているのだろうかと思いながら、食堂へと続く廊下へと歩き出した。
道中タブレットで絵心さんへとドーピングや体調・怪我の問題は無かったとメールで報告する。
『ドリンクとタオル用意したら、凪のチームのトレーニング見に行かなきゃ…』
なんて思いながらチームVの部屋の前を通り過ぎようとしたがふと足を止める。
前に凪はトレーニングルームに居ないで部屋で寝ていたことがあった。
『……居たりして』
一応確認しなければと思いチームVの部屋の扉を開ければ寝息が聞こえた。
「すぅ……すぅ。ん〜……」
予想的中。
部屋では布団が一組だけ敷かれていてその上で大の字で寝ている凪の姿があった。
気持ち良さげに眠っている姿に溜め息が出てしまう。
『凪〜、凪。ねぇ、今トレーニングの時間なんだけど』
「ん〜」
『起きてくれないかなぁ……』
しゃがみこんでから、凪の男性にしては白い肌を指で突いてみるが反応は無い。
熟睡しているのかそれともわざと無視しているのか……そう思いながら指で頬を押してみたりする。
暫くすれば、ゆるりと瞼が持ち上がり凪の眠たげで感情が揺らいでいない目が私を捉える。
目をシパシパと動かしてから溜め息をつく声が聞こえた。
「またアンタ〜?泣き虫マネージャー」
『またって……私のセリフなんだけど。今、トレーニング中だよ?』
「ダルい、面倒。ねむーい」
『ねむーいじゃなくて……。今、一次選考が行われているし凪達のチームも一次選考があるんだよ?トレーニングして、練習しなくて良いの?』
「別に〜」
『凪ぃ……お願いだからトレーニングして?じゃないと私が絵心さんに怒られる』
溜息を零しながら呟けば凪は気怠そうにしている。
そして腕を伸ばしたかと思えば、私の腕を掴んでからそのまま引っ張ると布団に引き倒した。
ジワリとした痛みが背中に広がるのと共に混乱でパニックになりかける。
「怒られたくないから、俺を起こすの?マネージャー、弱っちいね」
『……そうだね、弱いよ。怒られたくないから凪を起こす。それと、仕事だから凪を起こす』
「面倒臭いね、アンタ……って、なんで泣きそうになってんの」
『凪が怖いからに決まってるでしょ!?』