第1章 青い監獄
「…秦野さん、アンタ…なんか、可哀想と言っていいのか分からねぇけど…」
『言っていいよ…』
そう、私はこの仕事に就く前はとあるブラック企業で働いていた。
残業残業ばかりでまともな睡眠も取れなければ食事も取れずに、過労死するのではないか…と思ったぐらい。
そんな時に兄と会って『お前ば馬鹿なのか!?直ぐに辞めろそんな会社!いや、俺が辞めさせる!』と怒られて強制的退職。
『でもまさか…唯一嫌いなサッカー関連の仕事に就くなんて思ってなかったな……』
ボソリと呟いた言葉は近くにいた蜂楽と國神に潔には聞こえていたようで、三人は目を見開かせていた。
「サッカー嫌いなのか?」
『ああ…うん、嫌い。凄く嫌い』
「念込めて言うな…」
「なんでサッカー嫌いなの?」
『……人と人の人生狂わせたから』
私の言葉は多分意味が分からないだろう。
案の定三人は眉間に皺を寄せながら首を傾げたりとしている。
でも理由はそれなのだ、その理由で私はサッカーが嫌いになった。
恨むほどに憎むほどに嫌いに…。
「…よく分からねぇけど、理由聞かねぇ方が良いだろ?」
『うん…出来ればそうしてほしい、かな…』
「あ、そう言えばさ!話題変えるけど 真琴ちゃんって幾つなの?俺らと歳変わらなさそうに見けるけど社会人だから年上だよね?幾つ、幾つ〜?」
空気を変えようとしたのか、ただ単に気になっていたのか少し重苦しくなっていた空気を蜂楽の言葉により変えられた。
『私は今年で19だけど…』
「……意外と歳近いな」
「19歳…俺より2歳上か」
「見えないな…19歳に」
『…え、老けてるように見える??』
「いや、どっちかと言うと幼い。顔が」
『……え、ほんと?』
幼く見えるのか私の顔は。
そう思いなが自分の頬に触れてみながらも、幼いと言われた事に少しだけショックを覚えた。
幼いとはあまり言われた事が無かった。
だが思い返せば年相応に見られたことは無い事に気が付き、なんとも言えない感情になる。
すると國神は自分の発言で私が気にしていると思ったのだろう。
少し慌てたような表情をしている。
「わ、悪ぃ 秦野さん。別に悪い意味で言ったわけじゃねぇんだ」
『大丈夫だよ…ただ、初めて言われたから驚いたというか……』