第9章 別れの時
“白玉あんみつ”や“クリームあんみつ”に“白玉ぜんざい”などが書かれてある。
「美都はどれにする?」
「私は、白玉あんみつにするわ…」
「じゃ、俺も同じのにしよう…」
今から思えば、食事の時トオルはいつも私と同じものを頼んでいた様に思う。
何故、いつも同じものを頼んでいたのかは分からなかった。
同じ何かを共有したいと言う思いがあったのだろうか。
運ばれてきた白玉あんみつを二人で食べた。
その白玉あんみつの味を今でも忘れることができない。
私たちは、ランチを済ませると外に出た。
そして、お互い無言でいつも行っていたラブホ街を目指していた。
昼時のラブホ街はちょっと気恥ずかしく感じたものだ。
外はまだ陽が射していて眩しいくらいに明るい。
そんな中、私たちはラブホ街を歩いているのだ。
でも、私たちは最後のセックスがしたかった。
最後の最後に、燃え上がるようなセックスがしたかったのだ。
ラブホ街は昼時とあってか、そんなに混んではいない様に感じた。
一軒の小奇麗なラブホを見つけた。
そのラブホに吸い込まれるようにして私たちは入って行く。
着物姿の女と若い男のカップルとは傍から見たらどんな風に映ったのだろうか。
私は、そんなことを考えていた。
トオルはちょっと安めの部屋を選んでボタンを押した。
私たちはルームキーを受け取り、エレベーターに乗り込んだ。