第10章 エピローグ
私は、そのメッセージを削除した。
トオルは、LINEを削除して欲しいと言っていたのに、自分でも私の電話番号を消せなかったのだ。
これ以上、トオルに深入りしてはいけないと思った。
私は、トオルの電話番号も削除した。
これで、完全に私たちの関係も終わったのだとその時感じた。
トオルは結婚してから本当の意味で結婚に悩んでいるのだろう。
結婚とは実に難しいものなのだ。
好きと言う感情だけでは長続きはしない。
お互い、生まれも育ちも違う、価値観も好みも違う者同士が一緒に共同生活をするのだ。
それが、結婚と言うのかも知れない。
その価値観の違う相手を、どこまでありのままの姿で受け容れることができるか。
それを、問われているのが結婚と言うものの様に私は感じている。
私も、誠一のありのままの姿を受け容れなくてはならないのだろう。
そんな風に考えたりもしていた。
セックスレスもただ、受け容れていく。
それは、生易しいものではないかも知れない。
私は今でも、チェキで撮ったトオルの写真を時々眺めている。
鎌倉に一緒に行った時に私に買ってくれたちぎり絵の絵葉書を見ながら。
このトオルと過ごした7か月間、本当に私は幸せだったと思う。
その思いを胸に私はこれから先も生きてゆく。
トオルにはありがとう。
そう言いたいと思った。
(終わり)