第9章 別れの時
トオルは着物姿の私を見ると非常に驚いている様に見えた。
「美都、今日は着物なんだね?見てビックリしたよ…」
「そう?おかしいかな?」
「そんなことないよ。とても似合ってて綺麗だよ…」
「ありがとう、嬉しいわ…」
そう言うと私たちは歩き出した。
この日は平日だったと思う。
トオルは有給を使って私に会いに来てくれたのだ。
夫の誠一は仕事で会社に行っていた。
私たちは軽くランチをしようと思っていたのだ。
「どこに食べに行く?」
「どこでも構わないわ…」
「じゃ、魚とか食べにいかない?」
「え?お魚?どこに?」
「美都と初めて飲みに行った和風居酒屋だよ…」
「でも、昼間だからまだお店はやってないんじゃない?」
「いや、ネットで調べたらランチをやってるようなんだ…」
「なら、そこに行きましょう…」
私たちは、初めて会った時に行った和風居酒屋に行った。
時間は昼時とあってちょっと混雑していた。
今日は個室ではなく、二人掛けのテーブル席へと案内された。
椅子に腰かけランチのメニューを見ていた。
魚料理を提供している店だけあってお刺身定食などがある。