第6章 青い果実
トオルはそのコンドームの箱を持っていた小さなバッグへとねじ込んでいた。
でも、私はこの青年をとても優秀だと感じたのだ。
ベッドインする時、男性はいつも避妊をしようとしないと思っていたからだ。
何故、女性は避妊を男性任せにするのだろう。
私はいつもそう考えていた。
女性がもっと強く避妊をしてくれと言ってもいいではないか。
妊娠して困るのは女性の方だと思ったのだ。
望まない妊娠をして、やりもしたくない堕胎をして、罪の意識にさいなまれる女性も多いと聞く。
そんな思いは私もしたくはないと思っていた。
トオルは女性が妊娠することに、非常に敏感に感じていたらしい。
それは、多分、まだ結婚していない彼女がいたからではないか。
“デキ婚”を彼は望んではいなかったのだ。
子供は、妊娠とは、結婚してから作るものだと思っていたらしい。
私は、世の他の男性にも聞かせてやりたい話だと思った。
そんな、トオルは横浜駅の外れまで私を連れて行く。
ちょっと駅から遠く離れると、怪しいネオンサインが見えてきた。
そこは、暗がりに浮かぶ街の様に見えた。
ホテルの看板が煌めいて見えたのだ。
「美都、どこのホテルがいい?」
「どこでも、構わないわよ…」
しかし、土曜日の夜なので、どこも満室だった。
私たちは、空きホテルを探しながらホテル街を歩いてゆく。
前回、個室でのキスをその時私は思い出していた。
もう少しの所で誠一から電話が掛かって来たのだ。