第6章 青い果実
私がそう言うとトオルはカウンターに置いた私の手を握りしめてくる。
私は、その行動を他人に見られていなかと少しハラハラしたが嬉しくも感じていた。
その居酒屋で何を頼んで食べたのか覚えていない。
だだ、店を出ようとした時、トオルが私の耳元でこう囁いたのだ。
「美都、これからホテルにいかないか?」
「え?ホテル?」
「そうだよ、ホテルだよ…」
私の心はすでに決まっていた。
前回、飲みにいった時の様なことにはならない事を祈っていた。
私たちは居酒屋を出るとホテル街を探した。
私は横浜駅周辺のラブホを知らなかった。
けれど、不思議にもトオルはとても詳しかったのだ。
過去に、誰かと来たのだろうか。
それとも、毎月1回長野から出てくる彼女と一緒に行ったホテルがあるからだろうか。
それは、私にもわからなかった。
私は、トオルに連れて行かれるままに歩いて行った。
その途中に、コンビニがあった。
そのコンビニの前でトオルは立ち止まる。
「どうしたの?」
「うん、コンビニで買い物してきていい?」
「ええ、いいわよ…」
そう答えるとトオルはコンビニ店内に入ってゆく。
私も、同じく後を追って入った。