第5章 北鎌倉
「美都は何にする?」
「うーん、お刺身定食とかがいいかな?」
「お刺身定食?」
「うん、それがいいわ…」
「なら、俺も、それにする…」
直ぐにメニューが決まってしまった。
私が女性店員を呼んで、オーダーをしたのだ。
ちょっと寒さを感じていたので、出されたお茶がとても暖かかった。
お茶を飲みながらまた、お喋りをした。
暫く、お喋りをしているとお刺身定食が運ばれてきた。
そのお刺身定食はかなりのボリュームがあったのだ。
でも、私はその定食の中に「生しらす」があるのを見つけた。
生しらすが私は苦手だったのだ。
そこで、私はトオルにこう持ち掛けた。
「私、生しらす苦手なんだけど…」
「えー?美都、そんな美味しいものが嫌いなの?」
「そうじゃなくて、生だから食べられないの…」
「食べられないのなら、俺が食べてやるよ…」
そう言うとトオルはとても嬉しそうに笑うのだ。
それを見て、嬉しくなってしまう私がいた。
「じゃ、トオルくんに生しらす全部あげるわ…」
「じゃ、遠慮なく頂きます…」
そう言うとトオルは私の生しらすの小鉢を自分のトレイに乗せてゆく。