第5章 北鎌倉
円覚寺にはお抹茶を頂ける『沸日庵(ぶつにちあん)』というところがある。
この沸日庵は境内のかなり奥の方にあった。
山門の先にある仏殿を横に進むと、右に大方丈がある。
方丈には入ることができて、お釈迦さまの入滅の場面を描いた涅槃図などが展示されている。
方丈の先には、立体感のある妙香池がある。
さらに進むと、左側にお釈迦さまの歯が祀られていると言う国宝の『舎利殿』がある。
中には入れないので、門の所から遠くの舎利殿を拝むのだ。
舎利殿を進むと、綺麗な花を咲かせる大きなモクレンの木が見えてくる。
そのモクレンの木の近くに『沸日庵』がある。
門の外から中を見ると、赤い毛氈(もうせん)の敷かれたお抹茶席が外にある。
拝観料100円。
お抹茶代(菓子付)500円を支払い中に入った。
『沸日庵』は、円覚寺を創建した北条時宗を祀るお寺さんだ。
受付で頂いたお線香を持ちお堂をお参りした。
この日はお雨降りだったので、沸日庵の縁側でお抹茶を頂いたのを覚えている。
縁側に腰かけると、直ぐに奥からお抹茶とお菓子を持ってきてくれた。
お抹茶は、苦みも風味もとてもしっかりしていて少し濃いめの抹茶だった。
お菓子は鳩の形をした私の好きな落雁だった。
この落雁は鎌倉の銘菓『鳩サブレ』で有名な豊島屋の落雁だ。
とても、深みがある甘味でとても美味しい。
私とトオルはこの沸日庵の縁側に腰かけて、お抹茶を飲みながらお喋りをした。
縁側から見る景色は雨にも負けず、とても美しかったのを覚えている。
すると、また、トオルが話し始めた。