第5章 北鎌倉
鎌倉にトオルと一緒に行く日は、朝から生憎の雨だった。
私は、赤いパーカーにジーンズを履いてジージャンを羽織った。
誠一はリビングで新聞を読んでいた。
「エリちゃんによろしく伝えてくれな…」
「ええ、分かったわ…」
そう言うと私は家を出た。
あざみ野まで出て、市営地下鉄に乗り、横浜で横須賀線に乗り換えて北鎌倉に着いた。
時間にしたら、1時間ちょっとだったと思う。
私は、北鎌倉に着くと改札を出て雨が降る中トオルが来るのを待っていた。
北鎌倉はとても美しかった。
木々の緑は雨に濡れて、しっとりとした光を放っていた。
小鳥のさえずりがどこからともなく聞こえてくるのだ。
そんな、小鳥のさえずりを聞いていると、1本の電車が北鎌倉に到着した。
その電車からは土曜日の雨だと言うのに沢山の人たちが降りてきたのだ。
その中に、トオルを見つけた。
満面の笑みを浮かべながら私の方に歩いてくる。
首からは何故だかカメラをぶら下げていた。
「や、美都、待った?」
「うん、ちょっと早く着いちゃったの…でも、大丈夫よ…」
「今日は随分と可愛らしい格好をしてるんだね?」
トオルは私の赤いパーカーとジーンズ姿を見てそう言ってきたのだ。
「今日は、歩くんじゃないかと思ってジーンズにしたのよ…」
「そうなんだ、とても似合ってて可愛いよ…」