第5章 あの夜のこと
中也は私を優しく抱いてくれた。
初めては痛いとどの本にも書いていたのに、全くそんなことはなかった。
きっと中也が痛くないようにしてくれたおかげだろう。
小柄なのにしっかりと引き締まった身体、男らしいゴツゴツした大きな手、微かに漏れる色っぽい吐息。
どれも初めての経験で、中也が男性だと改めて感じた。
織田作が死んで、ポートマフィアを抜けると決めた時にやっと自分の気持ちに気付いたのだ。
中也が好きだと、、、、。
それを伝えたら、中也はどう思うだろう。
中也も私のことを想ってて欲しい、、、、。
なんて想いが胸に込み上げたが、抑えこんだ。
何故なら、彼の前から姿を消すから。
だから、最後に中也に抱いて欲しかった。
きっと中也以外の人を好きになることなんてこの先ないと思ったから。
眠っている中也の頭をそっと撫でた。
『好きだよ、中也、、、、さようなら。』
そっと中也の唇に接吻をし、私は彼の部屋を後にした。
----これが四年前のあの夜のことだ。
まさか中也も私と同じ気持ちだったなんて、、、
嬉しかった。
それと同時に胸が締め付けられた。
中也の気持ちも考えずに、自分の我儘で彼に抱いてもらい、姿を消したのだ。
紅葉「主が姿をくらましてから、中也は荒れた。好きでもない女を抱き、必死に主のことを忘れようとしていた。見るに耐えなかった。然し、中也は主を忘れなかった。絶対に見つけると決め、仕事に打ち込んだ。気が付けば女を抱くこともなくなり、今では立派な男になった。」
姐さまからの言葉に何も返せなかった。
中也を苦しめたことに罪悪感が生まれた。
紅葉「、、、もし主が中也のことを好いておるなら、立場のことなんか考えなくてよい、主の気持ちを伝えるんじゃ。」
『えっ、、、、?』
紅葉「主達は長年の互いを想い合ってきた。離れていた間もずっと、、、そしてついに再会することができたのじゃ。もういいんじゃないかのぉ、、、中也、、、?」