第3章 好きなモノ
1人になった部屋で先ほどの出来事を思い出していた。
私の為にあんなに怒ってくれた人は今までいなかった。
彼が初めてだった。
でも彼は何故あんなに怒ってくれたのだろう、、、。
ふと疑問が浮かんだ。
周りから恐れられている私。
兄さんだけが私の味方だった。
兄さんが私の世界、、、、。
は太宰しかいない世界で生きてきた。
だから、中也が何故怒ったのかが理解できなかったのだ。
暫くすると、再び扉が開いた。
扉が開くと同時に、ふわっといい匂いが部屋の中に充満した。
「ほら、これでも食え。」
目の前に置かれたのはうどんだった。
『??』
「手前、朝からなんも食ってないだろ?ちゃんと食わねぇから隙突かれんだよ。」
中也の云う通り、は朝からなにも食べずに働いていた。
食に関心のないは、あまり食事を取らなかった。
勿論、生きるために必要最低限のモノは口にしていたが、、、。
『作ってくれたの?』
「こんくれぇ、作ったのうちに入んねぇよ。」
部屋を出てから10分もかからずに戻ってきた中也。
あまりの手際の良さに驚く。
兄さんはこんなことしてくれたことないのに、、、。
どうしてこんなに優しくしてくれるの、、、?
そんなことを考えていた時だ。
ぐぅー。
「ふはっ、ほら腹減ってんじゃねぇか。さっさと食えよ」
『ッいただきます、、、』
お腹が鳴るなんて初めてだった。
よほどお腹が空いていたのだろうか、、、
それとも、目の前のうどんが美味しそうに見えたからだろうか、、、
一口食べた瞬間、は呟いた。
『美味しい。』
「そりゃあ善かったぜ」
そこからは箸を休めることなく、うどんを食べ切った。
なんと汁まで飲み干したのだった。
それほど、美味しかったということだろう。