第10章 六年前の悪夢
----六年前
龍頭抗争開始から七〇日目
兄さんの執務室へ入ろうとドアを開けた時だった。
ドガッ!
太宰「いきなり殴るなんて酷いな。私だって人間なのだよ」
「誰も信じねぇよ。殺されなかっただけ感謝しろ、、、、っ」
私に気付いた中也と目が合うものの、すぐに視線は晒された。
「ッ、、、"白麒麟"の野郎は俺がなんとかする。手前は其処で死ぬまだ寝てろ」
帽子を深く被り直し、表情が見えない中也はそのまま私の前を通り過ぎ部屋を出て行った。
トクン、、、
なぜか胸が苦しくなった。
その理由は判らない、でも中也のあの表情が脳裏に焼きついていた。
中也の表情は"怒り"と"苦しみ"だった。
今だから判るが、この時の中也は恐らく仲間たちが戦場で戦っているのに、何も出来ない歯痒さと仲間の死をなんとも思っていない兄さんに腹が立ったのだろう。
暫くその場から動けなかった。
すると、、、、
太宰「おかえり、」
『うん。兄さん大丈夫?』
太宰「ほーんと中也は乱暴だし、莫迦だ。私は痛いのが嫌だと何度も云っているのに全く学習しない。、手当して〜」
ほんの一瞬兄さんの表情が曇った気がした。
然し、すぐにいつもの兄さんに戻った。
太宰「、私は少し出かけてくるよ。善い子に待っていてくれ給え。」
頷くと兄さんは私の頭を撫で、部屋を出て行った。
そしてその数時間後、兄さんは行方不明となった、、、