第1章 素直になれなくて(舞&光秀&家康)R18 有
光秀との時間が増えるにつれて、は彼に対してさらに強い感情を抱くようになっていたが、光秀との距離を縮まらなかった。
距離を詰めすぎないように光秀がコントロールしていたのだ。
体調やケガは気遣ってくれるが、あくまで冷静に、に必要なことだけを教え、余計な情は見せない。
ある朝、気になり過ぎて、は光秀に問いかけた。
「光秀さんって私をまだ信用していないですか?……なんだか毎日一緒にいるのに、いつも壁を感じます。もしかして出来が悪いし、手もかかるし、嫌いですか?」
その言葉に、光秀は少し困ったような顔をしながらも、冷静に答えた。
「嫌いではない。ただし、小娘と慣れ合う筋合いはない。これも仕事の一環だ」
その冷たい言葉に、は胸が締め付けられるような思いをした。
光秀は自分の気持ちにまったく気づいていないのだろうか?それとも、気づいているのにあえて距離を置いているのだろうか?
明らかにシュンと落ち込んだ様子のを見て光秀も心の中でため息をついた。
(はぁ、そんなに落ち込むな…)
日々の訓練が厳しくてもは弱音を吐かなかった。
決して器用ではないものの、は根性があり、少しずつ成長していた。
実際に、馬術や剣術なども上達してきたを見て、光秀は彼女の努力の成果を感じていた。
そして、褒めるたびに嬉しそうに顔をくしゃっとさせる彼女の姿が、何とも愛らしかった。
光秀は自分自身が、に対して少しずつ情が湧いているのを自覚していた。
だが、それと同時に、彼女からの好意が強くなっていることにも気づいていた。髪を撫でただけで、彼女は分かりやすく顔を真っ赤にし、目を潤ませていた。
光秀はとの関係がこれ以上深くならないように、距離を保とうと決心していた。
せっかく生き抜く術を教えていると言うのに、自分の仕事のせいでに危険が及べば本末転倒である。
今までだって、お館様の命令であれば私情を捨て政務に励んで来た。
しかし、の存在は光秀の心の奥ににじんわりと広がっていった。
彼がどれほど距離を取ろうとしても、彼女はの素直な性格がそうはさせてくれなかった。