第3章 一人の男と一人の女(顕如)
「顕如さん…気持ちよかったですかぁ?」
ふわふわと間抜けな顔で、両手をこちらに伸ばしてくる#NAME1#を見て、
「こんな気持ちは久しい。もう過去は忘れ去たが…」
と本音をぽろっと漏らした。
「よかった」
ふにゃけた笑みを浮かべるを強く抱き締めた。
そして、濡れた手ぬぐいを使いながら躰を拭き綺麗にしてやった。
「すぅすぅして少し肌寒いですね」
窓や扉を閉じながら、褥を引いてくれた。
「先に準備できへんくて、かんにんな。」
着物を着せつけながら、顕如が自分の帯を巻いてくれている。
その指に触れたくて、また素直な躰が疼いた。
着物を着せつけると、その後抱き締めてくれた。
「あんたが、何者とか、そういうんは全部抜きにして、もう目の前からおらんくならんといてくれ」
「顕如さん」
「ずっとそばにおってくれ」
「はい、約束します。」
「今、何を考えてるんですか?」
「とどこに行こうかと…この時期なら紅葉が綺麗やし」
「わぁ…!!嬉しい。逢瀬に行けるんですね」
顕如とは、この後訪れる様々な苦難の前のひと時の幸せをかみしめた。
「今を精一杯生きよう。一人の女と一人の男として。」
ー完ー