第3章 一人の男と一人の女(顕如)
「脅しなら帰りませんよ。丸腰であなたと話をしに来ました。」
「何のために」
(その手の度胸で、掻き乱されるのはごめんだ。一度信用したが、もう無理だ)
「解決の道を探しませんか?顕如さん。私はそのためならなんでもします!」
「世の中な、神も仏もおらんと思う時はある、今から祈っても、話し合いをしても意味はない!私は鬼に成り果てた。もちろん私も赦されようとは思っていない。」
「まだ昔の顕如さんが残ってる!きっと、死んでいった人はあなたに生きて欲しいと、この先の時代を託した。」
「生意気な!小娘に何が分かる!」
そのまま覆い被さり馬乗りになったまま細い白い首に片手をかけた
「貴方は私を殺さない。怖くない!」
は目に涙を溜めながら言った。
「私が怖いのは、私が、、怖いのは」
顕如の指の力は強まるが、は目を逸さなかった。
「殺さないでという目をしてるぞ!」
(大丈夫!この人は私を殺す気はない)
「私は、私は!!!貴方に死んでほしくない!!」
掠れゆく声で叫んだ。
「‥‥。」
手の力も体の力もゆるまり、は顕如の体の中から抜け出した。
少し距離を取り、帯を緩め襦袢姿で目の前に立った。
顕如はふと笑い、
「今更、別に武器を持ってるかを疑ってはいないが」
ぼそっと呟くと同時に、頭を抱きしめられた。
その時、畳にへたり込むかのように力なく座っていた事にようやく気づいた。