第1章 素直になれなくて(舞&光秀&家康)R18 有
皮肉にも、ワームホールの場所は光秀が内偵捜査している場所のすぐそばだった。
急にあたりが暗くなり始め、雷が鳴った。
馬から降りると、ゆっくり撫でて御礼を言い、帰れるねっと行って手綱を外した。
傘も吹き飛ばされるような雨だった。
そんな道を歩いているのはだけだった。
光秀(…なんでこんな所に!)
最初が自分を追ってきたのでは?と思ったが、そんなはずはないと思考をめぐらせた。
(わーむほぉるとやらか。)
は500年後の世界に帰るのだろう。
嘘を言っているとは思っていなかったが、実際その瞬間が迫っているとなると、不思議だった。
本来の自分なら、姿を表さずにこのまま見送る所だが、気づけば、に駆け寄っていた。
「…風邪をひくぞ」
「光秀さん…なんでここに?…会いたかった…」
思わずが胸に飛び込んで来た。
「くっ…」
諦めて、を抱き締めた
「帰るんだろう。最後に顔が見れて良かった」
「光秀さん…私は…。」
さっきまでの決心が揺らぐ
(帰りたくない。)
大きくうずまく黒い雲がを追ってくるかのように近づいてきた。
いよいよ現実味を帯びてきた話に、光秀は改めて驚いた。
「光秀さん…。好きです。貴方が私を好きじゃなくても。500年後に行っても、きっと貴方を想ってしまう。」
胸から取り出した桔梗の押し花を開いて見せた。
「あなたの無事を祈ってる。絶対に忘れない。」
が吸い込まれるように渦に体を引き寄せられていく。
手を繋いでいるが引き離されそうになる。
「!!(帰るな)」
その声に、は、先ほどとうって変わって大粒の涙で叫んだ。
「光秀さん、嫌だ。帰りたくない…傍にいたい」
がもう一方の腕を伸ばし必死に抗おうとする。
の腕を両手で引き寄せたが下半身がもう既に飲み込まれている。
「行くな。」
渾身の力で光秀がぐんと引き寄せるとが落っこちてきた。
そのまま抱き寄せて走ると、ワームホールが追いかけてきた。
建物の影で身を潜め、やり過ごすとしばらくは、雷が鳴り響いてごうごうと音を立てていたがやがて嵐は去った。